08年度JRA賞受賞馬の選考委員会が6日、東京都港区のJRA六本木事務所で開かれ、年度代表馬にはウオッカ(牝5歳、栗東・角居)が選出された。牝馬の受賞は記者投票となった87年以降では97年エアグルーヴ以来、実に11年ぶり。海外遠征に弾みをつけた。ウオッカと天皇賞・秋で死闘を演じ、有馬記念で37年ぶりの牝馬Vを飾ったダイワスカーレットは特別賞が検討されたが、受賞には至らず無冠に終わった。
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長い“写真判定”は不要だった。競馬史に残る死闘となった天皇賞・秋を思わせる激戦が予想された年度代表馬争いだが、終わってみればウオッカが全体の6割にあたる180票を集めて完勝。牝馬としては97年エアグルーヴ以来、11年ぶりの快挙を成し遂げた。
時折もろさを見せながらも1年間戦い抜き、安田記念と天皇賞・秋を制したウオッカ。故障の影響で計3走ながらも、有馬記念を圧勝するなど絶大なインパクトを残したダイワスカーレット。そして、NHKマイルC-ダービーの変則2冠馬ディープスカイ。その序列は、天皇賞・秋の着順がストレートに反映された。
ウオッカとディープスカイはともにG1・2勝で、直接対決では1勝1敗。もしダイワスカーレットが天皇賞を制していれば、年度代表馬の栄誉を獲得していたに違いない。力量差以上の幅となって表れた票数がレコード決着の激戦に、より大きな重みを与えた。
3歳時は牝馬として64年ぶりにダービー制覇の偉業を達成しながら、最優秀3歳牝馬のタイトル争いでは14票にとどまり、G1・3勝のダイワスカーレット(275票)に完敗していた。角居師は「大変光栄に思います。たった2センチの差でしたが、素晴らしい馬と素晴らしいレースができたことをうれしく思います」と永遠のライバルをたたえながら受賞の喜びを表現した。1分57秒2のなかで生まれた“2センチ差”。それを年度代表馬へと昇華させたことがウオッカの魅力であり、持って生まれたたぐいまれなる強運とヒロイン性だ。
今後は2月後半にドバイ入り。3月5日に本番と同じ舞台で行われるG2ジュベルハッタ(ナドアルシバ・芝1777メートル)から、同28日のG1ドバイデューティフリーへ向かい、昨年4着の雪辱を誓う。海外遠征に積極的な角居厩舎としては初めて、現地の前哨戦を使ってから本番に向かう策を選択、必勝態勢で臨む。
新たな勲章を手にしたウオッカは今年、ダイワスカーレットとともに国外へ目を向ける。世界がその最高級の強さに酔う日は近い。
-デイリースポーツ-