気負いはない。坂路に入ったカジノドライヴは、キングストレイル(7歳オープン)を自然体で追いかけた。徐々に加速して残り200メートル地点で並ぶと、相手に合わせたまま併入でゴール。どこにも無理のない走りで、800メートル51秒8−38秒0−12秒4を計時した。
「競馬が近いのが分かっている。息の入りは良かったし、以前と違って、使っても体が硬くならなくなった」と青木(レースは安藤勝)。1週前までは出走の当落線上にあったが、出すつもりで仕上げてきただけに状態に何の不安もない。藤沢和調教師は「今年、既に1回使っているし、間隔もあいていないからね」と順調さをアピールした。
課題も、着実にクリアしている。「前走のアレキサンドライトSは、次に2000メートル(ドバイ・ワールドC)を予定していたから、引っかからないように乗った。今回はマイル戦。流れに乗れるよう、前半からハミをとらせた」と青木。指示通りに走れるセンスに「こんなに乗りやすいオープン馬はいない」と舌を巻いた。
初の1600メートル。芝地点からのスタートだが、藤沢師に気にする様子はない。「左回りの方が良さそうだし、どちらかというと行きたがるので、速い流れは合う」前走はマイナス22キロでの勝利だったが、「今回は増えて出せると思う」。大一番に向け、馬体もしっかりと整えている。
この日、藤沢師の元に、写真家の今井寿恵さんが亡くなるという悲報が入った。数々の名馬を送り出したトレーナーと、それを追い続けた名カメラマン。親交は深く、19日には厩舎を訪れる予定だったという。「厩舎の看板用に、カジノの写真を撮ってもらうつもりだったのに…。頑張らなきゃいけないな」
カジノは、今井さんが期待していたスター候補。存命中に見せられなかった大舞台での勝利を、天国に届けるつもりだ。
-スポーツ報知-