
日本の現役最強馬ダイワスカーレット(栗東・松田国厩舎、牝5歳)の引退が16日、正式に決まった。ウオッカのライバルとして、数々の名勝負を演じてきた世紀の名牝も、脚部不安には勝てなかった。今春から繁殖牝馬として子作りに専念。自身が果たせなかった海外GI制覇の夢は2世に受け継がれる。
苦渋の決断だった。現役続行か、引退か。去就が注目されていた日本最強馬ダイワスカーレットは、ターフに別れを告げることになった。
11日のフェブラリーS1週前追い切り後に左前浅屈腱炎を発症。フェブラリーSだけではなく、ドバイワールドCや英国有数のビッグレースであるプリンスオブウェールズS挑戦プランもすべて白紙になり、今後について大城敬三オーナーと生産者兼共同オーナーの吉田照哉氏(社台ファーム代表)が16日に会談。カネヒキリのように重度の屈腱炎から奇跡的なカムバックを果たした例はあるが、現役続行のリスクよりも、繁殖牝馬としての将来を重視した結論が下された。
引退の知らせを聞いた主戦の安藤勝己騎手は「ドバイでも通用すると楽しみにしていただけに非常に残念です。血統、馬格、前向きな気性と走る馬の条件を兼ね備えていた馬なので、きっといい子を出してくれると思います。またスカーレットの子供に乗せて頂ければ幸せです」とコメント。最後のレースとなった有馬記念(08年)では牡馬勢を子供扱い。37年ぶりに牝馬優勝を果たし、その実力をワールドツアーで証明できなかったのは残念だが、安藤騎手が太鼓判を押すように、繁殖牝馬として前途は洋々だ。
兄ダイワメジャーは天皇賞・秋、皐月賞、安田記念などGI5勝の名馬で、近親にもヴァーミリアンなど一流馬が多く、母系は日本トップクラス。父アグネスタキオン譲りの好馬体も魅力だ。今春から故郷の社台ファーム(北海道千歳市)で母親としての第一歩を踏み出すが、栄誉ある花婿候補はチチカステナンゴ(牡11歳、フランス産、GIパリ大賞典勝ち)が予定されている。
ウオッカのライバルとして牝馬GIを席巻し、昨秋の天皇賞(2着)はわずか2センチ差という競馬史に残る名勝負を演じた。志半ばでわずか12戦(8勝)で競走生活に幕を閉じることになったスカーレットだが、その偉大な足跡をファンは忘れない。世界制覇の夢は12年夏にもデビューする子供に託される。
-サンケイスポーツ-







