

JRAの2009年GIレース第1弾、ダートマイル王決定戦・第26回GIフェブラリーS(1600メートルダート)が22日、東京競馬場で開催され、内田博幸騎乗の6番人気サクセスブロッケン(牡4=藤原英厩舎)が、カネヒキリ、カジノドライヴらとの猛烈な叩き合いを制して優勝。JRA・GIは初勝利、地方交流GIを含めると08年7月のジャパンダートダービー以来となるGI2勝目を達成した。勝ちタイム1分34秒6は、05年メイショウボーラーの1分34秒7を0秒1更新するレコードタイム。
一方、叩き合いに敗れたクビ差の2着には安藤勝己騎乗の3番人気カジノドライヴ(牡4=藤沢和厩舎)、さらにアタマ差の3着にはGI最多勝記録更新の期待がかかっていたGI7勝馬の1番人気カネヒキリ(牡7=角居厩舎)が入った。なお、同レース連覇を目指した武豊騎乗の2番人気ヴァーミリアン(牡7=石坂厩舎)は直線追い込みきれず6着に敗れた。
世代交代を告げる渾身の一撃。戦前、逆転が難しいとされていた4歳馬代表のサクセスブロッケンが、土壇場の大舞台でやってのけた。
「もう、うれしいのひと言ですね」
殊勲のV騎乗を見せた内田博は開口一番、満面の笑顔で喜びを語った。昨年の有馬記念を完勝した女傑ダイワスカーレットが回避した以上、このレースはカネヒキリvs.ヴァーミリアンの7歳2強対決、という見方が一般的な下馬評。逆転があるとすれば“最強世代”の4歳馬、しかしそれはサクセスブロッケンではなく、米国生まれの超良血カジノドライヴへの期待だった。人気もそれを表すカネヒキリ1番人気、ヴァーミリアン2番人気、カジノドライヴ3番人気。サクセスブロッケンは昨年こそ“3歳最強”とうたわれていたが、対古馬4連敗で6番人気と評価を落としてた。
同馬を管理する藤原英昭調教師ですら、「弱気というわけではないけど、あの7歳馬2頭に勝つには、まだちょっと時間がかかるかな」と、ここで必ず逆転できると思っていたわけではない。それほど、昨年のJBCクラシック、JCダート、東京大賞典、そして今年初戦の川崎記念でカネヒキリ、ヴァーミリアンにつけられた差は大きかった。
しかし、この不利な状況を打開してみせたのはサクセスブロッケン自身の成長力。ベテランにはない4歳馬特有の上昇度だった。
「パドックでまたがった時、ものすごく良くなっていると思いましたね。背中から伝わってくる柔らかさとか、だいぶ成長していると思いました」(内田博)
この急激な成長を促した最大の要因こそが、古馬に後塵を浴びせられた敗戦の数々。内田博が振り返る。
「東京大賞典や川崎記念でカネヒキリらに負けていましたが、そうしたキツイ競馬をしてきたことが、今回に生きたんじゃないかと思います」
藤原英調教師も、深い砂にまみれた地方競馬場での敗戦が体力、精神面両方の成長につながったと語る。ただ負けていたわけではない。苦い敗戦を噛みしめながら、若い4歳馬は逆転の機会を虎視眈々と狙っていたのだ。
その絶好の舞台こそが、この東京1600メートルダートコース。「今までは2000メートルとか、小回りの競馬場で窮屈だったけど、今回は1600メートルの外枠で、現状の条件ではベストだったから、内田君も乗りやすかったと思う」とトレーナー。手綱を託された内田博も「前走の川崎記念は折り合いを欠いて、能力が半減してしまった」と悔いの残る騎乗だっただけに、今回は「道中がすごくスムーズで、自分のリズムで行けたのが良かった。それが最後の直線に生きたと思いますね」と、広い東京のマイルコースで全能力を出し切らせたことを大きな勝因に挙げた。
レースは思い描いたとおり、無理をさせずに道中3番手。最後の直線はすぐ前を行くカジノドライヴに「一瞬、離された」が、サクセスブロッケン自身も坂を上がりきったところでエンジン再点火。そして、残り50メートルで同い年のライバルを競り落とし、どうしても勝てなかった王者カネヒキリの猛追も今度はしのぎきってみせた。
上位3頭はタイム差なしのクビ、アタマ差の大激戦。「ここまで来たら勝ってくれ!」と願う内田博に応える、サクセスブロッケン渾身のV撃だった。
「僕以上に、『あの7歳馬2頭に勝ってやるんだ』と厩舎スタッフが信じて馬を仕上げてくれた」
こう笑顔を浮かべた藤原英調教師。ここを今年の1つの大目標としていたため、「秋に向けて休養します」とこの後はしばしのリフレッシュ休暇。そして、「もっと成長すれば、1800、2000メートルもクリアできるのでは」と、借りの残る秋のJCダート、年末の東京大賞典でのリベンジに思いをはせる。
05年生まれの現4歳世代は、このサクセスブロッケンを筆頭にキラ星のごとく才能あふれるダートホースが続々と登場し「ダート最強世代」と呼ばれた。そして、このフェブラリーSは4歳馬のワンツー決着と、ついに実力で示した先輩超え。長く席巻していた02年生まれ7歳馬の時代が終わり、ダート界は05年生まれ4歳世代へと、新たな時代が幕を開けたか。
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