
春の最強マイラー決定戦「第59回安田記念」が7日、東京競馬場で行われた。1番人気ウオッカが直線、馬群をこじ開けて連覇を達成。この優勝で獲得賞金は牝馬初となる「10億」を突破、今後の活躍次第ではディープインパクトをも抜くことになりそうだ。
64年ぶりの牝馬によるダービー制覇、ダイワスカーレットとの2センチ差の死闘を制した天皇賞・秋…。記録にも記憶にも残る名シーンを刻んできたウオッカが、また1つ金字塔を打ち立てた。安田記念の優勝賞金1億円(付加賞金別)を加えた総獲得賞金は10億1991万1800円。牝馬として史上初めて10億円の大台を突破した。
馬群から、なかなか抜け出せなかったゴール前。「ヒヤヒヤしながら見ていた。かわせるとは思わなかった。馬に感謝している。ホッとした」。レース後の会見で正直な感想を口にした角居師。同時に「精神的にゆったり、しっかりしてきた。普段の調教でも問題になることは何もない」と進化を続ける愛馬を称えた。磨き抜かれた馬体は、圧勝のヴィクトリアマイルからマイナス2キロ。仕上げには寸分の狂いもなかった。
見た目には辛勝でも、内容的には完勝。ヴィクトリアマイルの直後には「年内引退」を明言した谷水オーナーも、圧倒的な強さを目の当たりにして「引き際をじっくり見極めたい」と語るにとどまった。これを伝え聞いた角居師は「お母さんになる使命があるのは分かっている。ただ、オーナーが来年も使うというのであれば調教師として非常に光栄」と話した。海外再挑戦に関しても「現時点では予定はないが、オーナーと相談する余地はあるかもしれない」と含みを残した。
今後については「オーナーの意思が最優先」とした角居師。ファン投票1位となっている宝塚記念への出走については「馬の状態を見極め、オーナーと話し合うが、僕自身はいろんなことに挑戦してみたい」と前向きに語った。もし、宝塚記念に優勝し、秋に予定している天皇賞・秋、ジャパンCも連勝すれば獲得賞金は15億円を超え、ディープインパクトを抜いて歴代2位に躍り出る。さらに、来年も現役続行となれば…1位テイエムオペラオーの18億円も視野に入ってくる。
繁殖牝馬としての価値は言うに及ばず。谷水オーナー、角居師ともに言葉の端々に揺れる心情が見え隠れした。さらなる高みを目指す10億円牝馬の今後は…。オーナーが何度となく繰り返した「引き際」という言葉に、すべてが集約されている。
▼ウオッカ 父タニノギムレット 母タニノシスター(母の父ルション)牝5歳 栗東・角居勝彦厩舎所属 馬主・谷水雄三氏 生産者・北海道新ひだか町カントリー牧場 戦績22戦9勝。
-スポーツニッポン-












