
◆第59回安田記念・G1(7日、東京競馬場、芝1600メートル、良) 昨年の覇者ウオッカ(武豊)が、直線で馬群に包まれる不利を克服し、先に抜け出したディープスカイを差し切って勝利。牝馬で単独トップとなるG1・6勝目をマークし、獲得賞金では、史上初の “10億円牝馬”となった。年内での引退が決まっていた同馬だが、この日の勝利を受け、谷水雄三オーナーは、現役続行の可能性もあることを示唆。ファン投票第1位の宝塚記念への出否も含め、女王の動向から、ますます目が離せなくなった。
どんなに切れる脚を持っていても、レースで発揮できなければ意味がない。直線の残り400メートル地点。ウオッカの前にすき間なく並んだライバルを目にし、武豊は一瞬、あせりを覚えた。
その気持ちは、内からディープスカイが先に抜け出したことで、さらに増大する。それでも、勝利を信じていた人馬に“光”は差した。サイトウィナーとスーパーホーネットの間にスペースができたのを見つけると、武はすかさず3〜4頭ぶん外に持ち出し、一気に馬群の前へ躍り出た。
ゴールまで100メートル弱しかなかったが、ウオッカの瞬発力をもってすれば十分だった。一完歩ごとにディープスカイとの差を詰め、並ぶ間もなくかわして先頭へ。最後は手綱を抑えるほどの余裕で連覇を達成した。
「皆さん、ドキドキさせてしまってすいません」。インタビューでファンの前に現れた名手の第一声は、謝罪の言葉だった。「妙に安全策を取ろうとしたのが、裏目に出てしまった。おじさんが乗った満員電車の中で、女の子が一人だけいるような状態でしたからね。今日は、馬を褒めてやってください」。冗談をまじえながらも恐縮しきりだったが、道中は“静”に徹し、ウオッカの能力を最大限に引き出したのは、武ならではだった。
好スタートから内枠を利して、中団のやや前へ。ラチ沿いの経済コースを進み、勝負の時をうかがった。「アクションを起こしていた外枠の馬につられないように、うまく進むことができた。直線を向くまでは完ぺきでしたからね」。課題だった折り合いをクリアした時点で、ゴール前での“爆発”は約束されていた。
スムーズでなかっただけに、より強さが際立ったレース。古馬になってから一度も連勝がないというジンクスも、あっさりはねのけた。8回目の騎乗だった武が、この安田記念を迷わず“ベストバウト”に挙げたのも当然だろう。「今までで一番強かったと言っていいと思う。この後は、どこへ向かうのか聞いてないけど、大きな期待を持って乗ることができますね」。勝利を重ねる度に進化を続ける“女王”。次回は、どれだけの驚きを与えてくれるのだろうか。
[ウオッカめも]
◆性齢 牝5歳の鹿毛。
◆血統 父タニノギムレット、母タニノシスター(父ルション)。父の産駒は重賞11勝目。
◆戦績 22戦9勝(うち海外3戦0勝)。重賞7勝目。JRAのG1は6勝目で、メジロドーベルを抜き、牝馬では単独トップに。最多は、シンボリルドルフ、テイエムオペラオー、ディープインパクトの7勝。
◆総収得賞金 優勝賞金1億円を加え、10億1991万1800円。牝馬の10億円突破は初めて。
◆連覇 ヤマニンゼファー(92、93年)以来2頭目。芝1600メートル戦は、9戦7勝、2着2回で連対率100%。
◆1番人気V 98年タイキシャトル以来。単勝支持率45.6%は、レース歴代6位。
◆ダービー馬対決 昨秋の天皇賞、ジャパンCに続いて、ディープスカイと対戦。その2戦は「1着と3着」、「3着と2着」で1勝1敗だったが、今回の勝利で一歩リードした。
◆武豊騎手(40) G1は64勝目。安田記念は、90年オグリキャップ、95年ハートレイクに続き3勝目。
◆角居勝彦調教師(45) G1は14勝目。
◆馬主 谷水雄三氏。G1級勝利は9回目。
◆生産者 北海道新ひだか町のカントリー牧場。
-スポーツ報知-












