
4戦4勝のロジユニヴァースが、史上17頭目となる無敗の皐月賞制覇を目指す。久々に関東に現れたスターホース。萩原清調教師は、西への対抗心を胸に、偉業達成へ挑む。
毎年のようにクラシックホースを出している、北海道安平町のノーザンファーム。優秀な“仲間”に囲まれたロジユニヴァースは、決して特別な存在ではなかった。「手のかからない優等生だったので、逆に印象に残らなかった感じ」とノーザンファームの林宏樹厩舎長は振り返った。
「脚元が曲がっていたので、大変かもしれない」というのが、林厩舎長の第一印象。左前肢が外向しており、調教には慎重を期した。中央の芝では負担が大きいと考え、育成時代は、地方競馬でのデビューを予定していた。
それでも、脚元の欠陥を除けば好感を持てるシルエットをしていた。「顔に品格があり、全体的にバランスが良かった」。1歳の夏以降、現在3勝を挙げているトーセンジョーダンと同じグループで調教されていたが、能力的に劣ることはなかった。
素質の片りんを見せたのは、速めの調教が始まる2歳春からだった。馬場が深く、最後に5%の勾配がある800メートルの屋内坂路。同世代の馬は、最後に脚が止まってしまうが、手綱を持ったままで3ハロン38秒台を刻んだ。「そこそこ走るのは分かっていたけど、ひょっとしたら…」林厩舎長の見る目も変わってきた。
厩舎の気持ちはひとつだった。「ぜひ、中央で走らせて下さい」−。2歳戦は間近に迫っていたが、その意向を受けて吉田勝己・ノーザンファーム代表も動き出した。脚元のハンデを承知したうえで、購入してくれたオーナー。それが、久米田正明氏だった。
5月に入ると、林厩舎長の胸に確信が芽生えてきた。新潟の未勝利戦(〈2〉〈3〉着)から“帰郷”した3歳馬に坂路の併せ馬で胸を借りた時の驚きは、今も鮮明に覚えている。「けいこ駆けする経験馬を子供扱い。相手は、スタートから1回も並ぶことができなかった」
林厩舎からは、ヴィクトリー、アドマイヤムーン、アドマイヤグルーヴ、ヴァーミリアンなど、数々のG1馬が育っている。「ムーンは、かなり苦労させられたのでドキドキしていた。ロジはドキドキ感がないんだよね。安心して見ていられる」。名馬の仲間入りを果たす瞬間を、楽しみに待っている。
-スポーツ報知-










